文庫楊令伝8巻のついでで買ったんですが、期待以上でしたね。作者の方は職業作家ではなく、要するに三国志好きのおじさんが趣味が高じて書いちゃいま した、っていう本で、文章とか練れてないね、なんて思ったりもしましたが、最初からそのつもりで読む分には十分楽しめる内容かと思います。
前書きにもあるとおり、三国志をある程度読んでいる(知っている)人向けです。三国志よく知りません、ていう人が手に取るとも思えませんけど。それなりに知っている人でも、この本に書かれた内容もちゃんとおさえてますって人はなかなかいないんじゃないでしょうかね。僕はこの時期のことはホントに通り一遍のことしか知らなかったので、とても参考になりました。帯に「累計12万部」ってありますけど、それだけ三国志好きが多いってことですよね。
合間合間に薀蓄が挟まるあたりかなり司馬遼太郎の影響を感じたりもしますが、それらの薀蓄がどこまで本当なのかはともかく、この時代の空気みたいなものを感じさせるには結構効果的なんじゃないかな、と思います。
あと、amazonのレビューに「呉についての記述が少ない」って書いている人がいますけど、もともと三国志ってそういうもんだし、この時期呉は全くしかけていませんし、戦をしない国が「物語の中で」脇役になるのは仕方ないでしょう。そもそも呉の末路って疑心暗鬼と足の引っ張り合いばっかりで面白くなくないですか?それはそれで面白く描くことは出来るのかもしれませんけど、この人には多分無理でしょう。